大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和53年(特わ)571号 判決

本店所在地

東京都江東区扇橋三丁目一〇番六号

株式会社 マスダ組

本籍

東京都江東区扇橋三丁目一三番地

住居

東京都江東区扇橋三丁目一〇番六号

職業

会社役員

増田貢

昭和九年一二月二五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官乙部二郎出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社マスダ組を罰金一、〇〇〇万円に、被告人増田貢を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人増田貢に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社マスダ組(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、ガス配管工事、道路復旧工事等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人増田貢(以下「被告人」という。)は、被告会社の取締役(昭和五三年四月一日以降は代表取締役)であって実質経営者としてその業務全般を総括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空外注費三期合計九七〇五万五〇八九円を計上して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三七〇二万三七〇六円あった(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月一六日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号所在の所轄江東西税務署において、同税務所長に対し、その所得金額が六一六万九七八六円でこれに対する法人税額が一七二万七〇〇〇円である。(但し、右申告所得金額に対する正しい法人税額は一七四万七六〇〇円であって、二万〇六〇〇円の計算誤謬があるが、この分については犯意が認められない。)旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五三年押第七八二号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一四〇八万九二〇〇円(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)と右申告税額に前記計算誤謬額を加算した金額との差額一二三四万一六〇〇円を免れ、

第二、昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三七五万九一三三円あった(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月三一日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四〇九万九七四九円でこれに対する法人税額が一一四万七七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一六六六万三六〇〇円(税額の算定は別紙(四)の二計算書参照)と右申告税額との差額一五五一万五九〇〇円を免れ、

第三、昭和五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六〇七二万四〇六九円あった(別紙(三)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月二六日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一五八七万五七二八円でこれに対する法人税額が五五一万円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号三)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二三四四万九六〇〇円(税額の算定は別紙(四)の三計算書参照)と右申告税額との差額一七九三万九六〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

第一、判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、

一、被告人の当公判廷における供述並びに検察官に対する供述調書(二通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書(五通)(乙2ないし8)

一、吉澤忠良、渡辺忠男の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一29、30)

一、増田和子の検察官に対する供述調書(甲一31)

一、登記官作成の登記簿謄本(二通)(甲一1・弁4)

第二、別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、

(イ)  売上(別紙(一)〈1〉-以下単に「(一)〈1〉」の如く略記する。-(二)〈1〉)につき、

一、大蔵事務官作成の売上勘定調査書(甲一2)

一、北沼一喜作成の「取引の内容について」と題する申述書(甲一3)

(ロ)  仕入((一)〈2〉、(二)〈4〉)、材料費((二)〈5〉)につき、

一、大蔵事務官作成の五〇/三期経費等調査書(甲一4)

一、大蔵事務官作成の五一/三期修正差額調査書(甲一11)

(ハ)  燃料費((一)〈5〉、(二)〈7〉、(三)〈5〉)につき、

一、大蔵事務官作成の燃料費勘定調査書(甲一6)

(ニ)  人件費((一)〈6〉)、厚生福利費((一)〈7〉)、賃借料((一)〈8〉)、修繕費((一)〈9〉)、保険料((一)〈10〉)、諸税公課((一)〈11〉)、消耗品費((一)〈12〉)、旅費交通費((一)〈13〉)、通信費((一)〈14〉)、交際接待費((一)〈15〉、(二)〈19〉、(三)〈18〉)、水道光熱費((一)〈16〉)、事務用品費((一)〈17〉)、家賃地代((一)〈18〉)、雑費((一)〈19〉)につき、

一、前掲甲一4

一、大蔵事務官作成の交際接待費勘定調査書(甲一8)

(ホ)  期首たな卸高((二)〈3〉)、期末たな卸高((二)〈8〉)、人件費((二)〈9〉)、給料手当((二)〈10〉)、賃借料((二)〈12〉)、修繕費((二)〈13〉)、保険料((二)〈14〉)、消耗品費((二)〈16〉)、通信費((二)〈18〉)、水道光熱費((二)〈20〉)、事務用品費((二)〈22〉)、家賃地代((二)〈23〉)、手数料((二)〈24〉)、新聞図書費((二)〈25〉)、諸会費((二)〈26〉)、雑費((二)〈27〉)、雑収入((二)〈29〉)、損金不算入法人税((二)〈31〉)、損金不算入延滞税等((二)〈32〉)、損金不算入地方税((二)〈33〉)につき、

一、前掲甲一11

一、大蔵事務官作成の五一/三期損金不算入延滞税等調査書(甲一17)

(ヘ)  雑給((三)〈9〉)につき、

一、大蔵事務官作成の雑給勘定調査書(甲一20)

(ト)  厚生福利費((二)〈11〉、(三)〈9〉)につき、

一、大蔵事務官作成の厚生福利費勘定調査書(甲一12)

(チ)  諸税公課((一)〈11〉、(二)〈15〉、(三)〈14〉)、損金不算入法人税((一)〈22〉)、損金不算入地方税((一)〈23〉)、雑収入((三)〈29〉)につき、

一、大蔵事務官作成の諸税公課勘定調査書(甲一7)

(リ)  旅費交通費((二)〈17〉)につき、

一、大蔵事務官作成の旅費交通勘定調査書(甲一14)

(ヌ)  備品費((二)〈21〉、(三)〈20〉)につき、

一、大蔵事務官作成の備品費勘定調査書(甲一15)

(ル)  減価償却費((二)〈28〉、(三)〈28〉)、雑損失((三)〈33〉)につき、

一、大蔵事務官作成の減価償却費調査書(甲一16)

(ヲ)  受取利息((一)〈21〉、(二)〈30〉、(三)〈30〉)、預金利息源泉税((一)〈25〉、(二)〈36〉、(三)〈41〉)につき、

一、大蔵事務官作成の簿外預金調査書(甲一9)

(ワ)  損金不算入役員賞与((一)〈24〉、(二)〈34〉)につき、

一、大蔵事務官作成の損金不算入役員賞与調査書(甲一10)

(カ)  交際費限度超過額((二)〈35〉、(三)〈40〉)につき、

一、大蔵事務官作成の交際費限度額調査書(甲一18)

(ヨ)  事業税((二)〈37〉、(三)〈42〉)につき、

一、大蔵事務官作成の事業税額調査書(甲一19)

(タ)  外注費((一)〈3〉、(二)〈6〉、(三)〈4〉)につき、

一、大蔵事務官作成の外注費勘定調査書(甲一5)

一、増田房江、遠藤伶子、米原緑、米原秀明、永野節子、小笠原圭子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一23ないし28)

第三、別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、

一、押収してある被告会社の法人税確定申告書三綴(当庁昭和五三年押第七八二号符号一ないし三)

(計算誤謬について)

検察官は、被告会社の昭和五〇年三月期における実際所得金額及びほ脱税額を算定するにあたり、計算誤謬による五九五円の損金計上を否認する(別紙(一)の修正損益計算書〈26〉参照。貸方当期増減金額欄に同額を計上)とともに、申告所得額に対する税額の算定に二万〇六〇〇円過少とした計算誤謬のある点についても、右過少分をほ脱税額に含める計算をしているが、右は被告人から経理を依頼された吉澤忠良の計算上のミスによるものであって被告人の何ら関知するところでなく、かつ、被告人の指示による所得秘匿行為とも何ら因果関係を有しない事項であるから、これらの金額につき被告人にほ脱の故意があるものとは認められないので、これらを除外した範囲内において前示のとおりほ税所得金額及び税額を認定した。

(法令の適用)

法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一〇〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 半谷恭一)

別紙(一) 修正損益計算書

(株) マスダ組

自 昭和49年4月1日

至 昭和50年3月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

(株) マスダ組

自 昭和50年4月1日

至 昭和50年3月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三) 修正損益計算書

(株) マスダ組

自 昭和51年4月1日

至 昭和52年3月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(四)の一

計算書

〈省略〉

(四)の二

※ 申告法人税額に計算誤りがある( )内が正しい税額である。

〈省略〉

別紙(四)の三

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例